本を読むと言ったらもっぱらビジネス書ばかりなのですが、たまにプロの文章が読みたくなると、昔から好きだった村上龍さんの本を読みます。
おしゃれと無縁に生きる
今回読んだのは、「おしゃれと無縁に生きる」という本です。
GOETHEという雑誌で連載されたコラムを集めた本ですが、短い文章ですらすら読めてしまいます。
ブログを書くのが恥ずかしくなるくらいその文章のうまさにやられてしまいます。
GOETHEのターゲット層が男性ビジネスマンなので、書かれている内容も今の日本によく話題にあがるものが多いのも読みやすい理由といえます。
本書では様々なトピックスについて書かれているのですが、トピックに対する視点というか、感じ方がやはり村上龍さんだなぁと思ってしまいます。
こちらが期待するような楽観的な話は一切なく、かと言って、全くだめだと一刀両断にするわけでもなく、全く予想していなかった著者自信の身も蓋もない結論は妙に納得できるから不思議です。
「昔がよかった」のか?という話では、昔は今の若い人が想像できないくらい貧しかったので、昔が良いはずがないとバッサリ切り捨てています。
なので年長者が、「昔はよかった」とかいうのを信用してはいけないと。
ただ、昔はよかったという代わりに、今の若い人は可哀相だと。そして、若い人だけでなく、中高年も生きづらそうだとも。
物質的に豊かになっているのに、なぜ「生きづらい」のかその理由がわからないと著者はいいます。
後の章で「不寛容」という話も出てきますが、自分はこの不寛容が生きづらい一つの理由なのではないかと思います。
自分もたまに昔はよかったと思うことがありますが、今のほうがスマホもあり、LCCがあり、どこに行くのも安くなったので、遥かに便利になっています。
ただ、今の世の中のちょっとでもミスしたら徹底的に叩くといった空気感というかそういったものが全員を生きづらくさせているように自分は思います。
本書だけでなく、村上龍さんの本を読むといつも「信頼」について考えさせられます。
本書の解説で山口絵理子さんが書いているように「小さな経済圏の中での信頼関係」がこの生きづらい世の中への対応策という点は私も全くそのとおりだと感じています。
特に大阪に帰ってきてからは、個人事業主や中小企業経営者らとの付き合いが多くなったので、その中では信頼関係ほど大事なものはないと感じるようになってきています。お客さんとの信頼関係、経営者同士の信頼関係、そういった「信頼」をもとにした関係性が今の生きづらい世の中を楽しく過ごす唯一の方法な気がしてならないです。
久しぶりに村上龍さんの長編小説を読んでみたくなりました。